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このドラマ解説にあたり以下の点にご留意ください。
・登場人物、地名の日本語表記及び聖書引用は主として日本聖書教会「新共同訳」に準拠します。
・脚色の多いドラマです。混乱を避けるために聖書に実際に登場するシーン、人物名は白色で記載します。
そうでない部分は聖書に明記されていないことをご了承ください。
今回は、何やら思い出話から始まります。みんな少し老けていて、時が経っているようです。
イエス(Jesus)と最初に出会った時のことを話している様子で、聞き手はヨハネ(John)
彼は後に「ヨハネによる福音書」を記した人物とされています。(厳密には本人というよりも彼の信仰や生き方に倣った弟子たちによって完成されたとの説が有力です)
皆の証言を集めて一つにまとめたい、出来れば最初から。
しかし、どの最初から始めよう…
外は大雨、雷が鳴り響きます。
「雷の音を聞くたびにあなたたち二人のことを思うわ。」と傍らのイエスの母マリア(Mary)が呟きます。
(ヨハネはイエスに託され、マリアを引き取って息子のようにお世話していました。)
ヨハネとヤコブ(Big James)の兄弟は「雷の子」とイエスにあだ名をつけられていたのです。
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時は戻り、若かりし頃のヤコブとヨハネ、二人は畑の開墾中。
鋤を引きつつ軽口を叩いています、重労働の愚痴だったり、仲間の悪口だったり…
そもそも俺たちだけ、何でこの仕事を仰せつかったんだろう???他の皆は先に町へ行ってるのに。
「そりゃぁ、俺たち働き者だし、イエスは俺たちが一番好きなんだよ。」
自分たち兄弟が、仲間内で一番先生のお気に入り、特別なのさ♪と鼻高々です。
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少し離れたところで、シカル(Sychar)の町を目指す3人がおりました。
ワイン醸造者のカフニ(Kafni)と娘のラマ(Ramah)そしてラマと共に働くトマス(Thomas)おそらく彼らは恋人同士。
より安全に、迷わず行く方法はどれかを論じています。カフニは終始仏頂面。
娘の恋人といるのが気に入らない…だけではなくて、こんな危険な地に連れて来るとは。
この辺り一帯はサマリア(Samaria)地方。ユダヤ人とサマリア人の関係は険悪です。元々は同じ民族だった彼ら…しかしサマリア地方は戦争に負けたことよりこの地域の人々は隣国アッシリア人と共存することになります。純血を誇るユダヤ人にとって、混血となったサマリア人は軽蔑の対象です。これを発端に両者は非常に忌み嫌い合う関係となってしまいました。
道を尋ねようと声をかけても「ユダヤ人が俺の母に声をかけるな!」と怒鳴りつけられるだけ…。
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シカルの町は大賑わい、イエスの話を聞きたいと人が続々集まっています。
ところが、肝心のイエスの姿が見えなくなりました。静かに休んでおられたはずなのに。
皆大慌てで探しに行きます。マタイ(Matthew)は留守番。元徴税人の彼は未だ皆と上手くなじめていません。イエスが誘ったとは言え、元々はローマの手先になって税金取りとして働いていた裏切り者、気に入らない奴というのが皆の本音かも。いちいち細かくて面倒くさい奴だし(笑)
さて、どういう成り行きなのか誰かの荷車を修繕していたイエスを見つけたのは、サマリヤ地方で最初に彼と出会った女性フォティナ(Photina)彼女がイエスのことを町中に言いふらしているために、続々とイエスの話が聞きたいと人々が押し寄せていたのです。
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トマス、ラマ、カフニの一行がシカルの町にようやくたどり着きました。
トマスが仲間に加わりたくて、イエス一行の後を追って来ていたのです。ラマも一緒に。
カフニは娘が一緒に行くことに本心は反対です。父親として思うことが多々あるのでしょう。明朝、ゆっくりイエスと話す約束をしました。今日は皆さん、お疲れ様、おやすみなさい。
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翌朝、昨日は畑仕事を頑張った二人、ヤコブとヨハネが今度はみんなを引き連れて市場へ向かいます。
「先生が俺たちに計画を教えてくれたんだぞ」
思いっきりドヤ顔で各自に買うべき物を指示します。お前はワイン買って来い、お前は肉買って来い、お前はパン買って来い…「はい、ご主人様。」と思わず嫌味を言うシモン(Simon)。
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その頃、カフニはイエスに思いの丈を正直に語っています。
自分のワイン商売を守ってくれたことには感謝している。(かつて結婚式でワインが足りなくなった時、水をワインに変える奇跡をイエスは起こしました。この時供されていたのがカフニとラマのワイン)
しかし、娘たちが主張するように私はあなたが奇跡を行ったとは信じられない。人間が奇跡を起こすなどは神への冒涜だ。(「ナザレの者」と言いかけて止めています。ナザレはイエスの出身地。何にもない土地、田舎者…と言いかけてさすがに失礼と思ったのでしょう)
娘が家を出てあなたについて行くのも喜べない。しかし、あなたには借りがある。自分のユダヤ人としての信仰は貫くが、正直な思いを語った上で娘たちをあなたに託す…すすり泣きながら語ります。ユダヤ人の中にはイエスの言動を理解できず、神への冒涜を繰り返す者と疑った人も多くいました。カフニもそのようにイエスを捉えていたのでしょう。
「お前は愚か者だ」カフニはトマスにそう告げます。良い仕事を捨ててイエスについて行きたいなど、そんな馬鹿な真似は私はしない。しかし最後には泣きながら彼に頼みます。
「娘を守ってくれ。」
父娘はここで別れ、カフニだけが家路に着きます。
「私に従って来る者には、私は多くを求めます。」イエスに従って行くという事は時に厳しい選択を迫られることもある、ということです。
しかし、イエスは聖書の中で約束してくださっています。
わたしの名のために、家、兄弟、姉妹、父、母、子供、畑を捨てた者は皆、
その百倍もの報いを受け、永遠の命を受け継ぐ。(マタイによる福音書19:29)
②に続きます。